よく そば屋の天ぷらは天ぷら屋の天ぷらと違い 衣が厚いと言われている
その原因については そば屋の汁のせいという説明がある
そば屋にはつけ汁( 辛汁)と かけ汁(甘汁)とがあるが てんぷらそばに使う甘汁は天ぷら屋の天つゆに比べて 醤油味が薄い
そうかといって辛汁では 反対に味が濃すぎてうまくない
つまりどちらの汁も 天ぷらに対して中途半端な味である
もちろん温かい天ぷらそばにするのだから 甘汁を使うわけだが醤油味の薄い甘汁でも 衣によく染み込ませればちょうどよくなるだろうということで 衣を厚くするようになった
これなら味をつけるのに 少々煮込んでもはがれる心配もない
別に小さな種を大きく見せる為というのではなかった という訳である
またそば屋の天ぷらは にぎやかに“花”を咲かせるのがきまりとも言われるが これは衣が汁の中に溶け出して汁の味を 渾然一体となる事で 天ぷらそばならではの風味が生まれるからである
しかし最近は 衣は花をさかせるものの 薄めにし煮込まずにそばの上に並べて その上から沸かした汁をかける天ぷらそばが 一般的になってきている